ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬について
ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬(通称、ベンゾ系薬剤)
→通常、睡眠薬、抗不安薬(安定剤)として用いられているお薬です。(表1)
本邦で承認されているベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬(表1)
一般名 | 販売名 | 一般名 | 販売名 |
---|---|---|---|
アルプラゾラム | コンスタン、 ソラナックス 他 |
フルタゾラム | コレミナール |
フルトプラゼパム | レスタス | ||
エスゾピクロン | ルネスタ | フルニトラゼパム | サイレース、 ロヒプノール 他 |
エスタゾラム | ユーロジン 他 | ||
エチゾラム | デパス 他 | フルラゼパム塩酸塩 | ダルメート |
オキサゾラム | セレナール 他 | ブロチゾラム | レンドルミン 他 |
クアゼパム | ドラール 他 | ブロマゼパム | レキソタン 他 |
クロキサゾラム | セパゾン | メキサゾラム | メレックス |
クロチアゼパム | リーゼ 他 | メダゼパム | レスミット 他 |
クロラゼプ酸二カリウム | メンドン | リルマザホン塩酸塩水和物 | リスミー 他 |
クロルジアゼポキシド | コントール 他 | ||
ジアゼパム | セルシン、ホリゾン、 ダイアップ 他 |
ロフラゼプ酸エチル | メイラックス 他 |
ロラゼパム | ワイパックス 他 | ||
ゾピクロン | アモバン 他 | ロルメタゼパム | エバミール、ロラメット |
ゾルピデム酒石酸塩 | マイスリー 他 | クロナゼパム | リボトリール、 ランドセン |
トリアゾラム | ハルシオン 他 | ||
ニメタゼパム | エリミン | クロバザム | マイスタン |
ハロキサゾラム | ソメリン | ミダゾラム | ミダフレッサ |
フルジアゼパム | エリスパン | ニトラゼパム | ネルボン、ベンザリン 他 |
医薬品医療機器総合機構PMDA からの医薬品適正使用のお願い No.11 2017年3月
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html
脳内の神経伝達物質の中で、GABA(gamma-aminobutyric acid : γ-アミノ酪酸)は抑制性の神経伝達物質として働き、このGABAの神経伝達が亢進すると催眠・鎮静作用などがあらわれます。
脳内の神経伝達に関わるベンゾジアゼピン(BZD)受容体は、GABAの受容体(GABAA受容体)と複合体を形成していて、BZD受容体が刺激されるとGABAに関わる神経伝達が亢進し、脳の活動が抑制され眠気などがあらわれます。
ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬はBZD受容体に作用することでBZD受容体を刺激し、主にGABAの神経伝達を亢進することで催眠・鎮静作用をあらわします。また、脳の活動を抑えることで抗不安作用や抗けいれん作用などもあらわし、睡眠障害の他、けいれん発作の予防薬や麻酔前投与薬などとして使用される薬剤もあります。
作用
眠気、鎮静、抗不安、筋弛緩、抗けいれん
副作用
- ふらつき
- 転倒
- 記憶障害(内服した後から寝付くまでの間や夜中に目覚めた時に取った行動を、翌朝覚えていない)
- 依存性(どうしても飲みたいという強い願望。飲まないと眠れないのではないかと思い込む)
- 耐性(同じ量で効果がなくなる)
- 退薬症状(急に止めると不眠、動悸、吐き気、めまい、しびれ、不安感などの離脱症状が出てくる。このため、止めたくても止められない)
- 脱抑制(理性の働きが鈍くなり、普段とは違って、怒りっぽい、涙もろい、寂しがる、わがまま言う、上機嫌、などの年齢不相応な行動を取ってしまう)
- せん妄
我々になじみ深いアルコールは、実はこのGABAA受容体の機能を増強することが知られています。よく見ると、上に挙げた作用・副作用、いずれもアルコールでも当てはまることに気づかれると思います。
ということは、ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬を内服するということは、アルコールを摂取することと、ほぼ同じということになります。「眠れません」という主訴の患者さんにベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬を処方することは、アルコールを処方していることと同様なのです。
Nutt D, King LA, Saulsbury W, Blakemore C. Development of a rational scale to assess
the harm of drugs of potential misuse. Lancet. 2007; 369: 1047-1053.
また、薬物の依存・耐性の強さでは、
との報告があり、ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬は覚醒剤よりも依存性が強いようです。
当クリニックでは、依存性の強いこの薬剤を、極力用いずに治療を行うよう心がけています。これまで飲み続けていて、なかなか止められない患者さん、減量中止に苦慮されている主治医の先生方、お気軽にご相談ください。